KOZAはロックシティ#5
オール沖縄ロケという情報だけで見てみました、映画「ゴールド・ボーイ」(金子修介 監督/2024年)………………おもしろかった!! 最初から最後までハラハラしっぱなし、2時間9分てマジ!? あっという間に駆け抜けていくクライムサスペンスでした。

昨年春休みの映画公開時には沖縄市ロケ地マップも配布されていたそうですが、この作品のこと全く知りませんでした……。実際、2024年興行ランキングを調べると、こんな王道の上質なエンタメ作品なのに、信じられないほどの下位に留まっている。ビクトル・エリセ監督31年ぶりの新作「瞳をとじて」より動員が少ないというのには驚愕。
ちなみに主演の岡田将生、同年主演作「ラストマイル」という映画では興行収入約60億円の大ヒットと、高低差がかなり激しめ。「ゴールド・ボーイ」における岡田は殺人者なんですが、これ以上ないくらいの悪い奴で、そこが見どころの一つ。アカデミー賞に絡んだ「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介 監督/2021年)での曲者っぷりも不気味でしたが、思い返せば「悪人」(李相日 監督/2010年)での下衆っぷり(車から満島ひかりを捨てるw)も大変印象的でした。この「悪人」⇒「ドライブ・マイ・カー」⇒「ゴールド・ボーイ」へと至る流れを、岡田将生のクズ人間・ホップステップジャンプとして記憶に留めておきたくなる、そんな悪漢(=圧巻)の演技でした。
では、ネタバレに厳重な配慮をしつつ、ロケ地紹介を。発端となる殺人事件の舞台は、劇中”読谷岬”などと看板も映し出されますが、現実には存在しない知名なので、読谷村の残波岬でしょう。残波岬の断崖絶壁を背景にしたタイトルバック(題字:ダウン症の書家・金澤翔子)が、増村保造か松本清張の映画みたいでキマってる!
羽村仁成、星乃あんな、前出燿志のティーンエイジャー3人組が、買ったばかりのデジカメで撮影していたビーチは、人少なめで穴場な、ウクの浜。グルっと崖に囲まれた海岸という絶景ポイント。そのデジカメに思わぬ映像が撮られていたことから物語が動き出す……までは、少年たちのちょっと特別な夏休みが描かれていて、ジュブナイルな感じすらあってキュンとします。
羽村仁成は、コザ在住の14歳という設定。うるま市に引っ越した幼馴染役の前出燿志が、腹違いの妹役・星乃あんなとともに、羽村を頼りにやってきます。コザベーカリー(羽村の母親役・黒木華がバイトしている設定)のパンを一心に頬張るシーンが印象的。3人はコザゲート通りをウロウロして、エンドレスサマー沖縄南店の目の前にあるプレイヤーズカフェでお茶。”朝陽”がパークアベニュー通りからパルミラ通りを抜け、国道に出ていくまで、緊迫のラストシーンは目が離せない!
この映画、主演格は岡田将生ながら実質的な主役は羽村仁成でしょう。羽村仁成は、ドラマ「俺の家の話」(宮藤官九郎 脚本/2021年TBS)でADHD役を演じ、かの西田敏行と互角に渡り合っているのを見たとき驚異の小学生だと感じたけれど、「ゴールド・ボーイ」でも安室朝陽という難役を飄々と演じていて、身震いする瞬間がしばしば。ジャニーズJr.出身ということで、二宮和也のような存在になるのでは!? そういう意味でも「ゴールド・ボーイ」というタイトルは象徴的だし、彼自身のことなのかもしれないと思ったりもした。
コザから誕生した黄金少年の、今後の活躍に注目したいと思います! 公開時なぜかあまり注目されなかった不遇な作品、配信が始まったので見てみてください。
