KOZAはロックシティ#09
「あんぱん」八木上等兵(妻夫木聡)の「(嵩が)勝手に僕の家に世話になるとか……聞いてませんね、この時には(笑)」という高度な朝ドラ受けで始まった、7月28日放送「あさイチ」は、”妻夫木聡がゆく もっと知りたい沖縄 戦後80年特別企画”を放送。もう一人のゲストに沖縄出身のジョン・カビラ氏を迎え、かなり踏み込んだ見応えのある内容でした。見逃し配信は↓こちら。
ブッキーは、約20年前の映画「涙そうそう」の撮影でコザに宿泊して以来、こっちに親友もいるそうです。9月に公開を控えている妻夫木聡の主演作「宝島」は、本土復帰前のコザが舞台で昨年までロケが行われていたせいか、フラッと顔を出した観光協会では特に驚かれることもなく馴染みまくり。通い続けている沖縄そばの店や、パークアベニューの商店街のアメリカンな店などを紹介しました。
しかしこの日の「あさイチ」は一味違う。和やかなコザのローカルガイドの趣から一変、コザ暴動の話題になり当時の映像が流れると、糸満出身の池間アナから扇動の経緯、市民の鬱憤が説明され、当時を知るカビラ氏からは幼少時の貴重な記憶が語られました。さらにカビラ氏は「沖縄の理不尽な状況は、地位協定に阻まれ今に至るまで変わっていない、”ほにゃららファースト”という言葉が跳梁跋扈してますが……」と、珍妙な選挙スローガンを引き合いに”米軍ファースト”を皮肉っていました。
さて、”妻夫木聡がゆく”は、フェンス越しの嘉手納基地を経て宜野湾市の佐喜眞美術館へと……。美術館で丸木位里、丸木俊夫妻の作品「沖縄戦の図」を鑑賞しながら、カメラの前で涙を堪えようともしないブッキーの姿が胸に迫りました。「沖縄戦の図」は常設展のためいつでも見ることが出来ますが、《沖縄戦の図》全14部の中から入れ替えて展示しているようです。つまり一度に全て見ることは難しいのですが、それくらいに大きい作品群ゆえで、どれも丸木夫妻の気迫が漲っています。
コンクリート打ちっ放しの建物が格好良い佐喜眞美術館に行ったら、屋上に出てみることをオススメします。普天間基地の敷地にある森に隣接しているので一見、解放感がありますが、眼下に続くフェンスのすぐ向こうはアメリカなのです。屋上にある階段の秘密と、その階段を上りきった壁穴から何が見えるのか……?! ぜひ現地で確認してみてください。



「あさイチ」には佐喜真道夫館長も映っていましたが、この美術館誕生に至るまでの館長の人生がまるでドラマのようなんです。以下のリンク先から半分は読めますが、有料記事ゆえに読めない後半部分を簡単にまとめました。

- 都内で行われた丸木夫妻の講演会に出向く
- 俊氏が体調を崩していると知り、針灸治療を勧めたことがきっかけで親交が深まる
- 夫妻と知り合い約10年を経た頃、沖縄戦の絵は沖縄に置きたいと申し出を受ける
- 私生活で様々な問題が起きるなか、人生を変える覚悟で開館を決意する
- 建築家から立地条件として「緑、海、祈り」が表現出来る場所を提示される
- 数年間、土地探しに難儀したが、先祖が残した普天間飛行場にある軍用地しかないと思い至る
- 一人で那覇市の防衛施設局に乗り込み、返還交渉を続ける
- 外務大臣、防衛庁長官、米国国務長官、国防長官から承認を得るための会議をいくつも要求する
- 3年間進捗なし、防衛施設局の役人から「米軍が渋っている」と言われ続ける
- しびれを切らし最後の手段として、宜野湾市のつてで米軍に直接交渉を試みる
- 米軍の不動産管理事務所長から「ミュージアム? 問題ありません」とあっさり回答を得る
「要するに防衛局は門前払いを決め込み、こっちがあきらめるのをずっと待っていた」「邪魔していたのは米軍ではなく日本政府。日米関係の構図が本当によく見えた」と、館長が仰るのも無理はありません。それでも不屈の精神のもと誕生した美術館、それ自体が最高の作品じゃないでしょうか。